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リッツ・カールトンが大切にするサービスを超える瞬間

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リッツ・カールトンが大切にするサービスを超える瞬間

De: 高野 登
Narrado por: 米田 基裕
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*本タイトルは、音声差し替え修正済みです。(2022年3月1日更新)

1983年にアトランタで誕生したザ・リッツ・カールトン・ホテル・カンパニーは、わずか20数年間で世界のホテル地図を塗り替えてきました。

米国のビジネス誌やレジャー誌ではつねにトップクラスの評価を得るまでになったのです。アジアにおいても、シンガポール、上海、香港などのリッツ・カールトンは、従業員にとって、もっとも働きがいのあるホテル・カンパニーとしての評価を受けています。(ベスト・エンプロイヤー賞。)

1997年に開業した大阪のリッツ・カールトンもまた、日経ビジネス誌をはじめ、国内外の主要誌によるホテルランキングで高い評価をいただいています。

しかし、リッツ・カールトンが目指しているものは、じつはホテル・カンパニーの運営ではなく、新しいライフスタイルとしてのブランドを確立していくということなのです。

たとえば大阪のリッツ・カールトン。小さくしつらえたロビー、自動ドアのない玄関、ちょっと分かりにくいエレベーターの位置、暖かいお部屋、グルメをうならせるレストラン、など等。それらはすべて綿密に設計された、「ラグジュアリー・ライフスタイルのブランド」の舞台装置なのです。

そして500人の紳士淑女、つまり従業員が、主役であるお客様に対していろいろな形でホスピタリティを生み出していきます。その舞台がたまたま宿泊施設の体裁を取っているだけなのです。その意味からすると、リッツ・カールトンはホテル産業ではなく、ホスピタリティ産業といえるでしょう。

ホスピタリティには、思いやりや親切心、心からのおもてなしという意味があります。つまりリッツ・カールトンが提供しているのは、単なる物や技術ではなく、まさに心そのもの。私たちのホテルが多くのお客さまから高い評価をいただいているとしたら、最大の理由もそこにあるのではと考えています。

私は20代前半に単身アメリカへ渡りました。それからニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコの大小さまざまなホテルで修行を積み、リッツ・カールトンと出会いました。それまでのホテルでもサービスの真髄をいろいろと学ばせてもらいましたが、リッツ・カールトンのサービスに対する考え方は大きく違いました。

何より驚いたのは、リッツ・カールトンでは、従業員も「お客様」として扱われることです。

たとえば以前、ボストンの従業員食堂では、入り口で黒服のスタッフが満面の笑みで出迎えてくれました。

「Welcome to my dining room!」

これはあとで知ったことですが、従業員を「内部顧客」と呼び、同じ目線でお互いを理解しあい、、心から尊敬しあう。それがリッツ・カールトンのサービス哲学であり、普段からごく自然に行われていることでした。

・どうすればお客様に感動を与えられるのか

・従業員が誇りと喜びを持てる職場環境とは何か

・お客様が言葉にされない願望を先読みして満たすためのチームワークとはどういうものか

豪華な建物と完璧なサービスマニュアルがあっても、こうした企業の熱いパッションが根底に流れていなければ、ホテルが宿泊産業の域を超えることはない。企業の「心」と「魂」が従業員を通してお客様に伝わって、初めてホテルは、ひとつのブランドへと昇華されるのです。

リッツ・カールトンの従業員は、クレド(信条)と呼ばれるカードを肌身離さず持っています。クレドはゴールド・スタンダードとも呼ばれ、経営理念や哲学がすべて凝縮されています。リッツ・カールトンにおいてホスピタリティの実現、つまりサービスを超える瞬間は、クレドの精神を全従業員が共有して初めて成し得るものなのです。

本書がビジネスを超えて、人と接するときのヒントになれば、嬉しく思います。

©Noboru Takano 2005
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